eCTD:#2 CTDの概要

こんにちは、パースペクティブの多田です。

前回の記事では、eCTDの概要についてご説明しました。

今回は、「CTD」について、もう少し詳しく解説していきたいと思います。


CTDとは

CTD(Common Technical Document)とは、医薬品の承認申請のための国際化共通資料です。厚生労働省が発出した通知「新医薬品の製造販売の承認申請に際し承認申請書に添付すべき資料の作成要領について」(以下「CTD通知」(*1)という。)によると、「CTDは、承認申請書に添付すべき資料の編集作業の重複を軽減し、日米EUにおける新医薬品に係る情報交換を促進し、もって有効かつ安全な新医薬品の迅速な提供に資することを目的として、ICHにおいて合意されたもの」とされています。CTD通知のタイトルからもわかるように、CTDは「承認申請書に添付すべき資料」に該当するものになります。

医薬品の開発期間は約10年といわれており、その試験結果を説明する資料は膨大な量になります。CTDが合意される前、日米EUで承認申請文書の構成に関しての取り決めがないころは、提出書類のフォーマットは、各地域でバラバラでした。そのため、申請者は提出する地域によって、資料を再作成・編集しなければなりませんでした。そうしたことを避けるため、日米EU三極のいずれにおいても受け入れ可能な様式を定義したのがCTDになります。

日本では、2001年にCTDの受付が開始され、2003年には新医薬品の承認申請時において、CTDでの提出が義務化されました。2017年にはジェネリック医薬品においても、CTDが義務化されています。


CTDの構成

CTDは第1部から第5部までの5つの部で構成されています。CTDの構成について、CTD通知 別紙1(*1)には、以下のように記載されています。


第1部(モジュール1) :申請書等行政情報及び添付文書に関する情報

この部(モジュール)には、例えば、当該地域における申請書又は添付文書(案)といった各地域に特異的な文書が含まれる。この部(モジュール)の内容及び様式については、当該規制当局が定めることができる。


第2部(モジュール2):CTDの概要(サマリー)

第2部(モジュール2)は、薬理学的分類、作用機序及び申請する効能又は効果等の当該医薬品の全般的な概略から始めること。原則として、この緒言は1ページ以内にまとめること。
第2部(モジュール2)は、以下の順番で7項目を含むこと:
・目次

・緒言

・品質に関する概括資料

・非臨床に関する概括評価

・臨床に関する概括評価

・非臨床試験に関する概要文及び概要表

・臨床概要


第3部(モジュール3):品質に関する文書

品質に関する資料を、CTD-品質に関する文書の作成要領に関するガイドライン(M4Q)に記載された様式で添付すること。


第4部(モジュール4):非臨床試験報告書

非臨床試験報告書を、CTD-非臨床に関する文書の作成要領に関するガイドライン(M4S)に記載された順序で添付すること。


第5部(モジュール5):臨床試験報告書

臨床試験報告書及び関連資料を、CTD-臨床に関する文書の作成要領に関するガイドライン(M4E)に記載された順序で添付すること。


薬機法に定められていること

次に、視点を変えて、薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)において、「承認申請書に添付すべき資料」に関して、どのように定められているかを見ていきます。

薬機法第14条には、当局に対して医薬品の製造販売承認申請を提出する際には、「申請書に臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならない」と定められています。

そして、その資料は、GLP及びGCPに従って倫理的、科学的に適切に実施された試験の成績に基づいており、「申請資料の信頼性の基準」に従って、試験結果に基づいて適切かつ正確に作成されている必要があります。こちらは、薬機法施行規則(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」)第43条に定められています。

添付すべき資料の具体的な内容については、薬機法施行規則の第40条に定義されており、申請区分(*2)によって提出すべき資料の範囲が変わってきます。医療用医薬品では、この内容をCTDの形式にして、当局に提出することになります。


次回から、CTDの電子化仕様であるeCTDについて解説していきます。

現在運用されているeCTD v3.2.2と、今後運用が開始される予定のeCTD v4.0について、2回に分けてご説明する予定です。


*1:CTD通知(別紙1~5は最新のもののみ掲載)

平成13年6月21日付医薬審査発第899号審査管理課長通知「新医薬品の製造販売の承認申請に際し承認申請書に添付すべき資料の作成要領について」

 平成15年7月1日改正(改正通知別紙1別紙3別紙4

 平成16年5月25日改正(改正通知

 平成21年7月7日改正(改正通知別紙2

 平成27年4月27日改正(改正通知

 平成29年2月2日改正(改正通知、別紙5は改正通知に含む)


補足1)CTD通知の別紙1と別紙3~5が「CTDに関するガイドライン」といわれており、CTD第2部から第5部に関する作成要領が書かれています(ICHにて合意されたCTDガイドラインを日本語訳したものです)。別紙2は、第1部(各地域に特異的な文書)の作成要領、つまり日本向けの第1部の作成要領です。

• 別紙1(コモン・テクニカル・ドキュメント(CTD)の構成)

• 別紙2(第1部 申請書等行政情報及び添付文書に関する情報に関する資料の作成要領について)

• 別紙3(CTD-品質に関する文書の作成要領に関するガイドライン、M4Q)

• 別紙4(CTD-非臨床に関する文書の作成要領に関するガイドライン、M4S)

• 別紙5(CTD-臨床に関する文書の作成要領に関するガイドライン、M4E)


補足2)CTD関連通知は、PMDAのHP「ICH-M4 CTD(コモン・テクニカル・ドキュメント)」に掲載されています。


*2:申請区分

医療用医薬品では、(1)新有効成分含有医薬品、(2)新医療用配合剤、(3)新投与経路医薬品、(4)新効能医薬品、(5)新剤型医薬品、(6)新用量医薬品、(7)バイオ後続品、(8),(8の2)剤型追加に係る医薬品、(9) ,(9の2)類似処方医療用配合剤、(10),(10の2) ,(10の3) ,(10の4)その他医薬品に分類されます。詳細は平成26年11月21日薬食発1121第2号通知「医薬品の承認申請について」に記載されています。

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