時事ニュース #3 コロナワクチンとGDP
こんにちは、田中です。
昨年から続いているコロナウイルスのパンデミックが、外出自粛や在宅ワークの促進など私たちの生活に大きな影響を与えている中で、皆様のライフスタイルはどのように変化してきているでしょうか。最近ではコロナウイルスワクチンの話題がニュースで取り上げられる機会も増え、本ブログのテーマであるGDPを連想させるようなキーワードも度々目にするようになりました。
そこで今回は、コロナワクチンの流通が今後のGDP対応に与える影響を、厚生労働省の「第1回新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業に関する自治体向け説明会 資料」(令和2年12月18日)(以下、厚労省資料)を基に考えてみたいと思います。
厚労省資料の内容を整理すると、今回、コロナウイルスワクチンが医療機関に届くまでの取り扱いは下表のとおりとなっています。
(厚労省資料を元に筆者作成)
※1:2021年3月1日付の添付文書改訂にて、-25~-15℃で最長14日間の保存が可能である旨が追記された。参考)「COVID-19ワクチン『コミナティ筋注』の日本における添付文書改訂について」(2021年3月1日 ファイザー株式会社)
※2:医療施設での受け取り時、温度モニターに✓印(温度逸脱が未発生)が表示されていることを確認する。 参考)「ファイザー新型コロナワクチンに係る説明資料-ワクチンの取り扱い-」(2021年2月 ファイザー株式会社)
※3:Bluetooth通信にてリアルタイムでデータを携帯端末に送信可能なロガーが採用された。 参考)「新型コロナウイルス感染症ワクチンの物流(保管・輸送)のための温度ロガー受注のお知らせ」(神栄株式会社 2021年1月8日)
上述の表は厚労省資料の内容を整理したものとなりますが、ここにある情報は医薬品のコールドチェーン(-20℃以下)における課題として挙げられる下記2点について、解決に向けたヒントとなり得るのではなかと考えます。
なお、2-8℃を保管温度とするアストラゼネカ社のワクチンでは「特別な対応は不要」となっています。この温度帯については今までの流通体制や管理手法でも十分に品質を維持できると判断されていると解釈できるかと思います。
①流通体制構築の主体
医薬品の流通過程では複数の業者が関与することとなるため、いかに一貫した温度管理を実現できるかが度々課題として挙げられてきました。このような課題に対して、今回のみの特例である可能性もありますが、製薬メーカー側に責任を一本化したことは着目すべきポイントではないでしょうか。厚労省資料では「卸業者を経由する場合は、メーカー又は当局の責任下でGDPガイドラインの適合を確認する」ことも求められているため、たとえ卸業者に輸配送や保管業務が委託されたとしても、GDP対応の責任は製薬メーカー側にあると解釈することができます。
②輸送中の温度逸脱の確認方法
GDP対応を推進するにあたり、医薬品の輸送中にリアルタイムで温度をモニタリングをすべきかどうかについても、製薬メーカーや卸業者にとって悩みの一つとなっているのではないでしょうか。今回のケースでは輸送中の温度逸脱の確認方法として、医療機関に届くまでに温度逸脱があったかどうかを確認する方法と、リアルタイムで温度をモニタリングをする方法の2つのパターンが採用されており、前者は保冷ボックス利用時、後者はディープフリーザー利用時に採用されています。リアルタイムモニタリングは温度が逸脱する前に兆候を捉えて逸脱を回避できたり、万が一逸脱が発生した場合であっても医薬品の品質に影響を及ぼさない許容時間内に対処できるという利点があります。したがって、温度逸脱により大量のワクチンの有効性が失われるリスクを考慮し、輸送単位も指標としてその必要性が判断されているのであろうと推測できます。
コロナウイルスが猛威を振るっている中で、医薬品のコールドチェーンにおける品質確保の取り組みが推進されるのは皮肉なことではありますが、今回の非常事態によってGDPの重要性が広く認識され、より良い体制が築かれてゆくようになることを願っています。
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