CSV:#7 CSV活動で作る文書③ DS

こんにちは、木村です。

早いもので、CSV活動で作る文書シリーズは今回が3回目となります。要求仕様書(URS)、機能仕様書(FS)に続いて、今回は設計仕様書(DS; Design Specification)について説明します。


いつ作るのか?

設計仕様書(DS)は、コンピュータ化システムのライフサイクルの開発段階で作成します。機能仕様書(FS)の後に作成する文書です。


誰が作るのか?

設計仕様書(DS)は供給者(製薬会社のIT部門やベンダー等)が作成し、規制対象組織(製薬会社のビジネス部門等)が承認します。


どのような目的で作るのか?

この文書は機能仕様書(FS)に基づいて、コンピュータ化システムの機能を実現するための設計仕様を明確にするために作成します。


どのような事を記載するのか?

適正管理ガイドラインでは、原則として以下の事項を記載するように示されています。

4.5.1 ハードウェア設計仕様
 (1) ハードウェア構成
 (2) ハードウェアリスト及び仕様
 (3) インターフェース
 (4) 入出力信号の詳細
 (5) 環境
  ① 設置の詳細条件

  ② システム機器の配置

 (6) 電源、接地等の設置条件



4.5.2 ソフトウェア設計仕様

 (1) 入出力情報の詳細

 (2) ファイル及びデータ構造

 (3) データ処理の詳細

 (4) 機能・モジュールの構成

 (5) インターフェースの詳細

 (6) 選択したパッケージソフトウェア


GAMP5では以下のような内容を記述することをガイドラインで示しています。

・構成設定
・ハードウェア設計
 ・コンピュータシステム
 ・入力と出力
 ・環境
 ・電源
・ソフトウェア設計

 ・ソフトウェア記述

 ・システムデータ

 ・モジュール記述


適正管理ガイドラインとGAMP5で示されている記載事項を比較しますと、下表のように該当することが分かります。ご参考までに、ご覧ください。

適正管理ガイドラインGAMP5を元に筆者作成)



どのように作るのか?

設計仕様書(DS)は機能仕様書(FS)と同様に、規制上はカテゴリ分類4および5のソフトウェアの開発において作成します。カテゴリ分類4はシステムアセスメント(*1)の結果によっては作成しないこともあります。カテゴリ分類4で設計仕様書(DS)を作成しない場合は、その代わりに構成設定仕様書(*2)を作成することがあります。

  • 設計仕様書(DS)は機能仕様書(FS)で要求された機能に対する設計内容を、ハードウェア/ソフトウェア毎に説明します。
  • システム開発ができるように、仕様は詳細かつ明確に記載します。
  • ハードウェア構成やデータ構造、インターフェースなどを説明する時は、図や表を用いると分かり易くなります。これら以外にも、図表にまとめられる事項では有効活用しましょう。
  • 各仕様に対してIDを振ります。
  • 記載する内容や状況に依り、1つの文書で完成することが困難な場合は複数の文書に分けて作成することも可能です。
  • 供給者側の標準フォーマットで作成される開発文書を設計仕様書(DS)とすることができます。その場合は、供給者が作成したどの文書が設計仕様書(DS)に相当するのか、また、記載内容に不足がないかを、遅くとも開発計画書(*3)を作成する時には確認しておきましょう。


設計仕様書(DS)の記載対象となる要求事項は機能仕様書(FS)で既に洗い出されていますので、実現方法が決まっている要求については、記載内容に関してはあまり悩まずに記述することが出来るかと思います。そうは言いましても、この設計仕様を基に開発することを考えますと、多くの情報を整理して載せることになりますので、これもプロジェクトの中では一山になると思います。

今回で開発段階において作成するドキュメントの説明は一旦終了し、次回からは検証段階の文書に入る予定です。



*1 システムアセスメント:CSV活動の1つ。システム構築方法や製品に由来するリスク、供給者に依存するリスクなどを評価し、後続活動の作成文書や検証内容を決める。適正管理ガイドラインでは実施する事項として「ソフトウェアカテゴリ分類」「製品品質に対するリスクアセスメント」「供給者アセスメント」が挙げられている。


*2 構成設定仕様書:システムを構成する1つ以上のソフトウェアパッケージに必要な構成設定を定義するための仕様書。


*3 開発計画書:適正管理ガイドラインで示されているCSV活動の1つ。開発計画に関する事項を記載する。要求仕様書(URS)と同時期に作成する。

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