CSV:#4 カテゴリ分類②
こんにちは、パースペクティブの山上です。
前回の記事(CSV:#3)ではCSVにおけるカテゴリ分類の意味・定義について説明させていただきました。
今回はCSVのカテゴリ分類について、具体例を交えながら説明していきます。
適正管理ガイドラインでのカテゴリ分類
厚生労働省が2012年に施行した「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」(以下、適正管理ガイドライン)では1.3章で「カテゴリ分類」の必要性が述べられ、さらに別紙2で「カテゴリ分類表と対応例」が示されています。
以下にそれぞれのカテゴリの概要と具体例を記載します。
カテゴリ1:基盤ソフト
適正管理ガイドラインでは、以下のように定義されています。
・カテゴリ3以降のアプリケーションが構築される基盤となるもの(プラットフォーム)
・運用環境を管理するソフトウェア
基盤ソフトとは単体では機能を発揮せず、アプリケーションが動作する環境を提供しているものを指しています。また、ネットワークを管理するソフトウェア、データべースソフトウェア、統計管理ソフトウェアも基盤ソフトに該当します。
例:Windows、Linux、Oracle、SAS
カテゴリ2:(このカテゴリは使用しない)
適正管理ガイドラインでは、以下のように定義されています。
このカテゴリは設定しない
カテゴリ3:構成設定していないソフトウェア
適正管理ガイドラインでは、以下のように定義されています。
商業ベースで販売されている既製のパッケージソフトウェアで、それ自体は業務プロセスに合わせて構成設定していないもの(実行時のパラメータの入力のみで調整されるアプリケーション等は本カテゴリに含まれる)
パッケージソフトウェアとは、市販されているソフトウェアのことを指しています。
カテゴリ3は構成設定を必要とせず、実行時の簡単なパラメータの設定や、マスタ(データを関連付けた一覧表)の登録だけで使用できるソフトウェアが該当します。
例:構造設備・分析機器・製造支援設備に搭載されたソフトウェア、市販のパッケージソフトウェア
カテゴリ4:構成設定したソフトウェア
適正管理ガイドラインでは、以下のように定義されています。
ユーザの業務プロセスに合わせて構成設定したソフトウェア(アプリケーション上で動作するマクロ等を含む)。
但し、プログラムを変更した場合はカテゴリ5とする
構成設定とは、業務設計に対応してモジュールの組み合わせや、モジュール間のデータの受け渡し等を改めて設定する作業が該当します。
購入したパッケージに対してユーザ要求を満たす機能を実現するために構成設定を行った場合や、システムが稼働する条件・複雑なパラメータ設定を行った場合はカテゴリ4に該当します。
構成設定を行わずに簡単なパラメータ設定を行った場合はカテゴリ3として検証を実施しますが、複雑なパラメータ設定を行った場合や、患者の安全、製品の品質およびデータの完全性に影響を及ぼす場合には簡単なパラメータ設定でも、カテゴリ4相当の開発・検証を実施します。そのため、カテゴリ3とするかカテゴリ4とするかは、設定内容のリスクに応じて各社で判断することが必要となります。
例:文書管理システム、経営資材管理システム、分散制御システム、データ収集システム、倉庫管理システム
カテゴリ5:カスタムソフトウェア
適正管理ガイドラインでは、以下のように定義されています。
業務プロセスに合わせて設計され、プログラムされたソフトウェア(アプリケーション上で動作するマクロ等を含む)
社内、または外部業者によって開発された独自アプリケーションはカテゴリ5に分類されます。
ユーザ要求を満たすために、商業ベースで販売されている既成のパッケージソフトウェアをカスタマイズして使用した場合も、カテゴリ5に該当します。
カスタマイズとは規制のパッケージソフトウェアに、プログラムレベルで追加または修正を行うことを示しています。
例:社内、または外部業者によって開発されたITアプリケーションやプロセス制御アプリケーション、スプレッドシートでマクロを使用した場合
CSVの目的は、医薬品・医療機器業界において、コンピュータ化されたシステムがユーザの要件を満たしていることを検証して、その品質を保証することです。
そのためにはリスクに応じて適切にシステムの品質保証を実施しなければなりません。
カテゴリ分類はCSVを実施する上で、対象となるシステム・ソフトウェアについてどの程度のCSV活動を実施すべきかの判断指標となることが重要なポイントとなります。
同一ソフトウェアでも、使用方法によってカテゴリ分類が変わるため注意が必要です。
厚生労働省から適正管理ガイドラインと同時に発行された「医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)について」の問39では表計算ソフト(※Excelのようなアプリケーションソフトウェア)について以下のように記載されています。
問39
表計算ソフト及びそれらで作成された計算式、あるいはマクロはどのカテゴリが適用されるか。
回答39表計算ソフトのような市販の汎用ソフトウェアを、製造記録の作成や出荷判定等のGQP省令及びGMP省令に係る業務等に使用する場合には、バージョン番号等をシステム台帳登録するなど適切な処置を行う必要がある。
表計算ソフトのセル計算式を設定した場合は、計算式の作成方法や複雑さに応じて、ガイドラインのカテゴリ3又は4として検証を行う必要がある。具体的なカテゴリについては、「コンピュータ化システム管理規定」に定めた企業の基本方針及びリスクアセスメントの結果等に基づき決定する。
また、マクロはプログラムの一種と考えられることからマクロを設定した場合はガイドラインのカテゴリ5としてマクロの動作を検証する必要がある。
なお、この場合の基盤となる表計算ソフトについては、バージョンを記載するなどカテゴリ1として検証を行うことになる。
このように同一ソフトウェアでも違うカテゴリに分類されることがあります。
使用方法や設定内容に起因するリスクを分析した上で、どのカテゴリに分類されるか判断することが重要です。
今回の記事は以上となります。
次回以降は、CSV実施の流れと成果物について詳しく触れていきたいと思います。
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