CSV:#5 CSV活動で作る文書① URS

こんにちは、木村です。

CSVシリーズでは前回前々回と連続してカテゴリ分類とは何か、また、どのような基準で分類するのかという事を学びました。今回から複数回に渡って、実際にCSV活動で作成する文書について記事を書いていきます。カテゴリ分類によって必須となる文書が異なりますので、前回前々回の記事を復習しながら読んでいただければと思います。

今後は要求仕様書(URS)、機能仕様書(FS)、設計仕様書(DS)、据付時適格性評価(IQ)、運転時適格性評価(OQ)、性能適格性評価(PQ)、トレーサビリティマトリクスなどに触れていく予定です。これらはCSV活動で作成する文書の一部ですが、各フェーズで大事な意味を成す文書です。また、それぞれ独立した文書ではありますが、相互に関連性もあるため取り上げていきたいと思います。


今回は要求仕様書(URS; User Requirements Specification)です。

厚生労働省の医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドライン(以下、適正管理ガイドライン)では要求仕様書と呼ばれており、一方GAMP5ではユーザ要求仕様書と呼ばれています。


いつ作るのか?

要求仕様書は、コンピュータ化システムの開発~検証~運用管理~廃棄というライフサイクルの中で、開発の構想段階で作成する文書です。


誰が作るのか?

サプライヤに協力してもらうこともありますが、要求仕様書は規制対象組織(製薬会社等)が主体となって作成します。


どのような目的で作るのか?

この文書はコンピュータ化する業務の要件を可視化して明文化することを目的とします。

CSVの要諦である「コンピュータ化されたシステムがユーザの要件を満たしていることを検証して、その品質を保証する」ためには、コンピュータ化する業務の要件を示した文書が必要です。

要求仕様書はこのための文書でもあり、CSV活動では重要な文書となります。


どのような事を記載するのか?

適正管理ガイドラインでは、原則として以下を記載するよう記されています。

(1) 適用される法規制及び適用する規定等
(2) ハードウェアの概要
(3) 要求機能

 ① システム機能の概要

 ② 運用要件の概要

 ③ 性能要件の概要

 ④ 障害対策機能の概要

 ⑤ 機密保護機能の概要(セキュリティ)

(4) データ

 ① 入出力情報の項目一覧

 ② 保存方法

(5) インターフェース(関連設備及び他システム等)

(6) 環境

 ① 設置条件

 ② システムの配置

(7) 電源、接地等の設置条件


GAMP5では適正管理ガイドラインに記されている内容の他に、「利用可能性要件」や「ライフサイクル要件」を必要に応じて含むことをガイドラインとして示しています。


どのように作るのか?

要求仕様書はカテゴリ分類3、4、5に該当するコンピュータ化システムの導入において作成します。

この文書は後の検証フェーズで「要求が適切に反映されているか」を検証する時に用います。その時のためにも作成時は以下の点に注意するとよいです。

  • 当然のことながら最も大事なこととして、コンピュータ化する業務の要件は全てこの文書に記載しておきます。この文書に要求の抜け漏れがあると、後続の計画や検証にも影響が及びます。
  • 要求は記載事項(上述の「どのような事を記載するのか?」参照)毎にまとめます。
  • 各要求にIDを振ります。例えば「ハードウェアの概要」であれば、この項目に関する要求は1-xといった具合に、IDは階層構造にして同じ項目をまとめると分かり易いです。
  • 1つのIDに対して1つの要求を記載します。1つのIDに複数の要求を盛り込むと、検証の際に「どの部分は確認できて、どの部分は未確認なのか」といった確認未済の混在が発生してしまって検証漏れを引き起こす原因となります。
  • 要求は、検証で「どのようなテストを行うか」を想像して、明瞭な記載をします。要件を明確に記載すると、後に実施するテスト項目の計画に繋がり易くなります。


以上が要求仕様書の説明と作成時のポイントです。

要求仕様書はCSV活動の起点となる文書ですので、後続の活動を滞りなく進められるように明快な記載を心掛けましょう。

0コメント

  • 1000 / 1000