時事ニュース:#2 医薬品 無通告立入検査の徹底強化

こんにちは、德原です。

今回はデータインテグリティに関する話題をお休みして、最近の医薬品業界の時事ニュースについて取り上げたいと思います。

時事ニュース:#1 水虫薬の睡眠導入剤混入事案について」でも取り上げられましたが、水虫薬への睡眠導入剤成分が混入した問題で、2021年2月9日、事案を発生させたメーカーに業務停止命令が出されました(LINK)。

上記同日の2021年2月9日付で「医薬品の製造業者におけるGMP省令違反等を踏まえた無通告立入検査の徹底強化等について」の通知が都道府県及び関係団体等に対し発出されています(LINK)。

さらに2021年3月12日に厚生労働省から、「令和2年度 全国薬務関係主管課長会議資料」が公開されました(LINK)。監視指導・麻薬対策課では、水虫薬への睡眠導入剤混入事案を受け、無通告立入検査の強化についても説明がありましたので紹介してみたいと思います(動画:LINK、資料:LINK)。


1. 水虫薬への睡眠導入剤混入事案の製造実態

水虫薬への睡眠導入剤混入事案の製造実態について、出荷までに発生した問題やミスについて下記のように説明されていました。

①本来使用するはずの原薬と睡眠導入剤の原薬の取り違え
⇒• 二人で行うべき原料の取り出し作業を、人員不足により一人で作業を実施していた

②取り違えた原薬を工程の途中で継ぎ足して使用

⇒• 承認外手順書というものが存在していた

 • 厚労省が承認していない、途中の継ぎ足しの工程を実施していた

 • 立入検査用に、虚偽の記録(二重帳簿)を作成していた

 • 承認していない工程に関する作業教育を口伝で行っていた(教育記録を残していない)


③品質試験において異常がみられたが、検証をせず出荷

⇒• 一部試験の実施しておらず、 試験結果を捏造していた

 • 異常データの検出に対し、原因究明が実施されていなかった


またその他の品目の製造実態においても、承認事項から逸脱した製造や二重帳簿について、経営陣、製造管理者が黙認している状態であったとのことです。


2. 無通告立入検査の徹底強化

水虫薬への睡眠導入剤混入事案を受け、令和2年度 全国薬務関係主管課長会議資料内で、下記の3点により無通告立入検査の実施を強化すると説明されています。

①無通告立入検査回数の増加
②無通告立入検査手法の質の向上
③製造品目数が多いジェネリック医薬品等、リスクの高い製造所への積極的な無通告立入検査の実施

②無通告立入検査手法の質の向上について、「立入検査時の姿勢や着眼点を『性善説』ではなく『性悪説』に立つように基本的な考えを変えていく必要がある」と説明がありました。これはGMP省令に沿って製造しているであろうという前提では二重帳簿などの悪質な事案を見抜くことが非常に難しいためです。製薬会社にとって、欧米と同じように日本においても『性悪説』に立った立入検査が行われるようになるインパクトは非常に大きいのではないかと考えます。

例えば矛盾や隠ぺいがないか徹底して確認するために、下記のようなことが考えられます。

  • 整理整頓が行き届いていない、すなわち管理が十分でない箇所の確認を重点的に行われる
  • 実際に作業しているところや作業中の記録など、活動中の状況を確認される
  • ある報告書を確認した後、その根拠となる文書の提示を求められる、さらにその文書の根拠となる資料の提示を求められる、といったように今まで以上に遡って文書の確認が行われる

しかしながら、経営陣による品質に対するガバナンスが正常に働いていれば必要以上に恐れることはないでしょう。今後、「GMP無通告ガイドライン」を作成し、都道府県が実施する無通告立入検査水準の向上及び平準化を図っていくことが予定されています。

また③のリスクの高い製造所について、2021年2月9日付の通知では具体的に下記のような製造所を挙げています。

・原薬の製造、受託製造及び多数の後発医薬品を製造する製造所
・過去に無通告立入検査を実施していない製造所
・新たな剤形の医薬品の製造を開始した製造所

・多数の自主回収が行われた医薬品の製造所


再発防止に向けた医薬品業界全体の自助努力に加え、厚生労働省は行政による監視指導の徹底や、行政当局間の連携強化を図るとしています。今後、製造品目の多いジェネリック医薬品を製造する製造所をはじめ、医薬品の製造所への無通告立入検査の実施が増え、検査内容についてもさらに強化されていくことが推察されます。





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