DI:#8 改正GMP省令で追加されたデータインテグリティに関する要件

こんにちは、德原です。

2021年4月28日に医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令が改正され、2021年8月1日に施行されました(以下、改正GMP省令とします)。

今回のブログでは予定を変更して、改正GMP省令で追加されたデータインテグリティに関する要件を紹介します。さらに、皆様の会社がデータインテグリティの観点で改正GMP省令に対応できているかどうかを確認するためのポイントを解説できたらと思います。


今回のGMP省令の改正により、データインテグリティに関する要件が追加されたのは下記の2箇所です。

1. 改正GMP省令 第2章 第8条(手順書等)第2項

2. 改正GMP省令 第2章 第20条(文書及び記録の管理)第2項


また上記追加箇所に加えて、厚生労働省が改正GMP省令の逐条解説をしている医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について(2021年4月28日 薬生監麻発0428第2号 課長通知)(以下、課長通知)の内容も合わせて紹介します。


1. 改正GMP省令 第2章 第8条(手順書等)の第2項

最初に、改正GMP省令 第2章の第8条第2項を引用します。

(手順書等) 
第八条 
(中略)
2 製造業者等は、医薬品製品標準書および手順書(以下この章において「手順書等」と総称する。)並びにこの章に規定する記録について、その信頼性を継続的に確保するため、第二十条第二項各号に掲げる業務の方法に関する事項を、文書により定めなければならない。

「医薬品製品標準書および手順書(以下この章において「手順書等」と総称する。)並びにこの章に規定する記録について、その信頼性を継続的に確保」の箇所が「データインテグリティの確保」に該当します。(今回のブログに出てくる「手順書等」も同じ意味で使用します。)


課長通知では、改正GMP省令 第2章 第8条第2項に関して下記のように解説されています。

11.第8条(手順書等)関係 
(中略)
(2)医薬品製品標準書及びGMP省令第8条第1項の手順書並びに同令第2章に規定する記録について、継続的に信頼性(いわゆるデータ・インテグリティ)を確保するため、同令第 20 条第2項各号の業務の方法に関する事項を文書により定めることを要するものであること。この場合の継続的とは、それらの文書及び記録の作成時から保管期間が満了するまでの期間にわたって継続するとの趣旨であること。 

以上より、改正GMP省令 第2章 第8条第2項で製薬企業に求められていることは、下記のように言い換えられます。

「データインテグリティを確保するため、改正GMP省令 第2章 第20条第2項各号に記載のデータインテグリティに関わる業務を手順書等に定めること。その際、手順書等及び記録の作成時から保管期間満了までの期間を通じてデータインテグリティを確保できるように定めること。」

では、改正GMP省令 第2章 第20条第2項各号についてみていきましょう。


2. 改正GMP省令 第2章 第20条(文書及び記録の管理)の第2項

改正GMP省令 第2章 第20条第2項を引用します。

(文書及び記録の管理)
第二十条
(中略)
2 製造業者等は、手順書等及びこの章に規定する記録について、あらかじめ指定した者に、第八条第二項に規定する文書に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。 
一 作成及び保管すべき手順書等並びに記録に欠落がないよう、継続的に管理すること。 
二 作成された手順書等及び記録が正確な内容であるよう、継続的に管理すること。 
三 他の手順書等及び記録の内容との不整合がないよう、継続的に管理すること。 
四 手順書等若しくは記録に欠落があった場合又はその内容に不正確若しくは不整合な点が判明した場合においては、その原因を究明し、所要の是正措置及び予防措置をとること。 
五 その他手順書等及び記録の信頼性を確保するために必要な業務 
六 前各号の業務に係る記録を作成し、これを保管すること。


2-1 「あらかじめ指定した者」の解説

課長通知では、改正GMP省令 第2章 第20条第2項の「あらかじめ指定した者」について下記のように解説されています。

28.第 20 条(文書及び記録の管理)関係
(中略)
(2)医薬品の製造業者等があらかじめ指定した者に行わせる医薬品製品標準書及びGMP省令第8条第1項の手順書並びに同令第2章に規定する記録の信頼性(いわゆるデータ・インテグリティ)の確保に係る業務について規定するものであること。あらかじめ指定した者については、当該文書及び記録の種類、内容等に応じて、その信頼性の確保に関して熟知している職員を責任者としてあらかじめ指定し、その職責及び権限を含め、GMP省令第6条第4項の規定による文書に適切に定めておくことが求められる。

改正GMP省令 第2章の他の箇条(第13条や第14条など)と同様に、第20条第2項に記載される「あらかじめ指定した者」として、責任者を指定し、職責及び権限を文書に定めるよう記載されています。対応として、新たにデータインテグリティの責任者を職責及び権限を定めた文書に追加することが考えられます。指定する責任者の人数に関しては、改正GMP省令 第2章 第6条第2項に「製造業者等は、製造所の組織、規模及び業務の種類等に応じ、適切な人数の責任者を配置しなければならない。」と定められているため、適切な人数を配置することになります。


2-2 データインテグリティに関する要件 及び データインテグリティに関わる業務例の解説

改正GMP省令 第2章 第20条第2項の各号のうち、一[第1号]、二[第2号]、三[第3号]、五[第5号]及び六[第6号]の下記の箇所がデータインテグリティに関する要件となっています。

  • 作成及び保管すべき手順書等並びに記録に欠落がない
  • 作成された手順書等及び記録が正確な内容である
  • 他の手順書等及び記録の内容との不整合がない
  • その他手順書等及び記録の信頼性を確保する
  • 各号の業務に係る記録を作成し、これを保管する

四[第4号]はいわゆるCAPA(Corrective Action and Preventive Action)の内容です。


次に課長通知の改正GMP省令 第2章 第20条第2項の第1号~第3号、第5号並びに第6号の解説箇所から、データインテグリティの確保に関わる業務の例をまとめました。これが全てではありませんが、改正GMP省令 第2章 第8条第2項 及び 第2章 第20条第2項で求められている、手順書等に定めるべき業務の例となります。手順書等及び記録の作成・レビュー・保管に関して、皆様がお使いの手順書等には下記のようなことが定められていますでしょうか?

<データインテグリティの確保に関わる業務の例(★)>

・手順書等及び記録の作成段階において、欠落がないよう必要なチェックを行う

・手順書等及び記録の作成段階において、正確な内容となるよう必要なチェックを行う

・手順書等及び記録の作成段階等において、混同・転記ミス・データのコピーエラーその他作業上の過誤を防止する措置をとる

・手順書等及び記録の作成後において、消失、読取り不能等が生じないよう適切なバックアップを行う

・手順書等及び記録の作成後において、内容に不正確な点が判明した場合に必要な訂正を行う

・手順書等及び記録の作成後において、不正な改変等が生じないよう適切な保全措置をとる

・手順書等及び記録の作成後など適宜、他の手順書等及び記録との整合性及び一貫性について照合を行う

・適宜、手順書等の作成及び保管と記録の作成及び保管に関連する業務に従事する職員に対して必要な教育訓練を実施する

・適宜、手順書等の作成及び保管と記録の作成及び保管に使用する設備、物品等の点検整備を行う

・手順書等及び記録の作成段階から保管期間が満了するまでの期間にわたって、データインテグリティの確保に関わる業務の記録を作成し、保管する


3. まとめ

今回、GMP省令の改正によりデータインテグリティに関する要件が追加されました。当該追加箇所の改正GMP省令 第2章 第8条第2項及び第2章 第20条第2項を、厚生労働省が改正GMP省令を逐条解説している課長通知と共に紹介しました。

すでに改正GMP省令が施行されています。

皆様の会社がデータインテグリティの観点で手順書等にて下記2点が定められていることを確認してみてはいかがでしょうか?

① データインテグリティの確保に関わる業務の責任者の指定、並びに当該責任者の職責及び権限
② データインテグリティの確保に関わる業務(前述★の例を参考に)

上記2点が手順書等に定められていれば、改正GMP省令 第2章 第8条第2項及び第2章 第20条第2項に対応できていることになります。


以上、改正GMP省令で追加されたデータインテグリティに関する要件及び確認ポイントについて紹介しました。






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