GDP:#9 GDP領域におけるCSVの進め方①序章
こんにちは、田中です。
GDPシリーズ直近3本の記事では、GDP領域においてコンピュータ化システムバリデーション(CSV; Computerized System validation)の対象となり得るコンピュータシステムを具体的にご紹介してきました。 今回からは複数の記事にわたって、これらコンピュータシステムに対してどのようなCSV活動を行うこととなるのかをご紹介していきます。
まず今回の記事では、GDP領域でCSV対応を推進するにあたっての背景を振り返ってみたいと思います。
2018年12月に厚生労働省より「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」(以下、GDPガイドライン)が発出され、対象事業者は各社可能な範囲で計画的にGDP対応を進めていくこととなりました。
さらに、GDPガイドラインの「1.5 品質リスクマネジメント」の1.5.2項では、以下のように述べられています。
品質マネジメントでは、品質に対するリスクの評価を科学的知見及びプロセスでの経験に基づいて行い、最終的には患者の保護につながることを保証すること。取り組み内容、正式な手順及びプロセスの文書化レベルは、リスクレベルに見合っていること。
そのため、各事業者においては、患者の安全に影響を及ぼすであろうリスクの高い事項から、手順やプロセスの整備を進められているかと思います。
業界向けのセミナーやWeb記事等においては、医薬品輸送時のリスクアセスメントや保管時の温度マッピングがテーマとして頻繁に取り上げられてきています。このような状況から、これら事項が優先して取り組むべきリスクレベルの高い事項であると一般的にみなされていることが示唆されます。
また、2020年1月に開催された「厚生労働行政推進調査事業成果報告会」(LINK) にて報告された「GDPガイドラインアンケート調査結果(2019)」(LINK) では、下記の項目に対し事業者からの実例紹介・説明希望が集中していることを確認できます(当該資料6ページ参考)。この結果からも対象事業者が患者リスクの高い事項から優先して取り組もうとしている様子がうかがえます。
実例紹介・説明希望のテーマとして10件以上の要望が挙げられた項目
(カッコ内は、アンケート対象である事業者からの実例紹介・説明希望の件数)
- 輸送(37)
- 温度及び環境管理(19)
- 品質システム(13)
- 外部委託と業務管理(12)
- マネジメントレビュー及びモニタリング(10)
そして現在2021年11月、GDPガイドラインの発出から間もなく3年が経過しようとしている中で、上述のような優先順位が高い課題をクリアして次のステップへとコマを進めようとしている事業者も現れてきているのではないでしょうか。
さらに、医薬品流通業界に限らず、全業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されている昨今、コンピュータシステムの重要性が増々高まってきています。
GDPガイドラインに遵守しながら効率的・効果的にDXを推進するためにも、GDP対応の次のステップとして、優先度を上げてコンピュータシステムに対する活動方針の検討を開始してみてはいかがでしょうか。
次回からの記事では、コンピュータシステムのGDP対応に着手しようとしている皆様にとって役立つであろうCSV活動の進め方について、既存システムと新規システムの両方の観点から解説してきたいと思います。
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