医療機器ソフトウェア：#7　JIS T 2304（IEC 62304）のソフトウェア開発プロセス① ソフトウェア開発計画（１）

こんにちは、西です。
JIS T 2304（IEC 62304）について、前回は４章「一般要求事項」で規定されているソフトウェア安全クラスに触れ、どのソフトウェア安全クラスに分類されるかによって５章以降の各プロセスの要求事項の対応要否が変わってくるということを書きました。
今回からいよいよ、この「各プロセスの要求事項」の中身について見ていきます。
まずはJIS T 2304（IEC 62304）の中核ともいえる５章「ソフトウェア開発プロセス」からです。

ソフトウェア開発計画

５章「ソフトウェア開発プロセス」では、はじめに5.1「ソフトウェア開発計画」アクティビティが規定されており、更にその中で5.1.1「ソフトウェア開発計画」タスクが規定されています。
5.1.1「ソフトウェア開発計画」タスクはソフトウェア安全クラスA/B/Cの全ての場合で対応が必要なタスクであり、以下のa)～e)の内容を含んだソフトウェア開発計画を確立することと規定されています。

a) ソフトウェアシステムの開発に使用するプロセス（注記4参照）
b) アクティビティ及びタスクの成果物 （文書化を含む。）
c) システム要求事項，ソフトウェア要求事項，ソフトウェアシステム試験及びソフトウェアに実装するリスクコントロール手段の間のトレーサビリティ

d) SOUP構成アイテム及び開発支援用ソフトウェアを含む，ソフトウェア構成管理及び変更管理

e) ライフサイクルの各段階で発見される医療機器ソフトウェア成果物及びアクティビティの問題に対処するためのソフトウェア問題解決

a)については開発プロセスを記載しておく必要があるという趣旨ですが、注記4を見ると

注記4　ソフトウェア開発計画では，既存のプロセスを引用しても新たにプロセスを定義してもよい。

とあります。
当社対応事例では、ウォーターフォールモデルで「要件定義」「基本設計」といった一般的かつ当社の標準的なソフトウェア開発プロセスに沿って開発を実施することをソフトウェア開発計画書の中に記載しています。
これにより、プロジェクト参画者間で開発プロセスについての共通理解を持つことができます。

b)については記載の通り、成果物をソフトウェア開発計画の段階で記載しておく必要があります。

c)については、当社対応事例では「トレーサビリティマトリクス」と呼ばれるマトリクスを作成し、それで各成果物間の関連性（トレーサビリティ）を管理することをソフトウェア開発計画書の中に記載しています。
（トレーサビリティマトリクスの詳細については別の記事でご紹介できればと思います）

d)及びe)についてはそれぞれ記載の通り、ソフトウェア構成管理及び変更管理、及びソフトウェア問題解決の方法についてソフトウェア開発計画の段階で記載しておく必要があります。

以上をまとめると、ソフトウェア開発計画書にはその目的や開発概要といった一般的な内容に加えて、少なくとも
・ソフトウェア開発プロセスの定義
・タスクとその成果物の一覧
・各成果物間のトレーサビリティを管理する方法
・ソフトウェア構成管理及び変更管理の方法
・ソフトウェア問題解決の方法
といった点について記載する必要があります。
構成管理や問題解決の方法の詳細については８章及び９章で規定されていますので、別途ご紹介できればと思います。

今回は以上です。
5.1.1「ソフトウェア開発計画」の中で、ソフトウェア開発計画の観点でソフトウェア開発計画書にどのようなことを記載すべきかが書かれているという点について理解してもらえば良いかと思います。