DI:#9 紙に記録する場合の対応方法/気を付けること[記録の記入編]

こんにちは、德原です。

以前の投稿「DI:#6 ALCOA原則/ALCOA+」において、データインテグリティの原則であるALCOA原則/ALCOA+について紹介しました。

昨今の電子化の流れを受け、多くの企業は記録の運用をデジタルベースで実施されていると思いますが、一部の企業は紙ベースでの運用を継続されているかもしれません。今回は、紙に記録する場合の対応方法や注意点について紹介します。なお、今回の記事はPIC/Sのデータインテグリティのガイダンスである「GOOD PRACTICES FOR DATA MANAGEMENT AND INTEGRITY IN REGULATED GMP/GDP ENVIRONMENTS」を参考にしています。英語の原文はこちらから確認をお願いいたします。


それでは紙への記録時に押さえておくべき下記A~Cにおける対応方法や注意点を紹介していきます。

 *()内はPIC/Sのガイダンスに記載されている章です

A. 記録用紙の管理(8.4章)
B. 記録用紙への記入(8.6章)
C. 記録の訂正(8.7章)


A. 記録用紙の管理(8.4章)

 対応:バージョン管理又は発行管理された記録用紙に記入する
 理由:管理された記録用紙を使用することによりトレーサビリティを担保するため[ALCOA+の原本性、正確性、完全性、一貫性]
 NG例:紙の切れ端やメモ帳、付箋など管理されていない用紙を記録に使用してはいけません。転記目的で付箋などの管理されていない用紙に一時的に記録することもNGです。これらがNGである理由は、管理されていない記録用紙を利用すると改ざんや記録内容の遺失のリスクが高まるためです

 補足:PIC/Sのガイダンスでは、管理されていない記録用紙の使用や、紙の切れ端等を用いた一時的な記録は、手順書で禁止するよう記載されています

記録用紙のバージョン管理及び発行管理の対応方法や注意点については別途、紹介したいと思います。


B. 記録用紙への記入(8.6章)

・対応:作業を実施した人が、作業実施と同時期(= 作業した直後)に記録する
 理由:作業実施と同時期に記録することで、何を行ったのかを正確に立証できるようにするため[ALCOA+の帰属性、同時性、完全性]
 NG例:記録用紙が近くにない状況で作業してはいけません。理由は作業実施後すぐに記録できないためです。また作業実施前に見切りで記録してはいけません。予定通り実施できるとは限らないためです。トラブル等で実際に実施したことが、見切りで記録した内容と異なる恐れがあります

 補足:PIC/Sのガイダンスによると、作業実施者以外の人員が作業を記録することは、記録する行為が製品または活動にリスクを伴う場合(例:無菌操作時の記録)を除いて実施すべきではないとされています。例外的に作業実施者以外の人員が作業を記録する場合、手順書にあらかじめその作業範囲を定めます。そして実際に記録する際は作業実施と同時期に記録し、作業実施者と記録者の両方を特定する必要があります

対応:内容が明確で、第三者に読みやすい字で記録する
 理由:記録内容を正しく判読・理解できるようにするため[ALCOA+の判読性]
 NG例:繰り返し記号の使用はNGです。記載内容が不明確になりやすいためです

対応:ボールペンなどの文字を消去できない筆記具を用いて記録する
 理由:記録の保管期間中に自然又は故意に消去されないようにするため[ALCOA+の判読性、耐久性、完全性]
 NG例:鉛筆やフリクションペンを使用するのはNGです

対応:紙に記録する際、記入者に帰属できる固有な署名を日付と共に記入する
 理由:いつ、だれが実施したかを特定し、責任の所在を明確にするため[ALCOA+の帰属性]

・対応:社内で定義された記載方法に従って日付を記入する(YYYY/MM/DD等)
 理由:日付を正しく判読できるようにするため(年月日の一般的な記載順は日本と海外でも異なります)[ALCOA+の判読性]

対応:使用しない空欄は、斜線等で無効処理し、署名と日付を記入する
 理由:記載漏れかどうかを明確にするため[ALCOA+の帰属性、完全性]
 補足:必要に応じて、無効処理(空欄処理)をした理由を第三者にわかるように追記します


C. 記録の訂正(8.7章)

記録の訂正は、トレーサビリティが維持される方法で行う必要があります。

対応:記録を訂正する場合、訂正箇所を1本線で取り消す
 理由:訂正前の内容を判読できるようにするため[ALCOA+の判読性、完全性]
 NG例:修正ペンや修正テープを使用するのはNGです

対応:記録を訂正する理由と共に実施者の署名・実施した日付を記入する
 理由:訂正内容が改ざんではなく正当なものであることを証明するため、さらにトレーサビリティを維持するため[ALCOA+の帰属性、正確性]
 補足:訂正内容が間違いないことを確認し、必要に応じて確認したことを確認者又は責任者が追記します


以上、今回は紙の記録用紙への記入・訂正時の対応方法や注意点について紹介しました。今後も紙の記録や電子記録において、データインテグリティを確保するために対応すべきことや注意点について紹介していきます。




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